早速書いていこう。
新宿バスタから伊勢市駅前までの夜行バスは24:00に出た。
浪漫、びあんか、若草堂
9:00前に伊勢市駅につき、そのまま観光案内所を覗くと、パンフレットとともに伊勢神宮への行き方を説明してくれる。朝食を食べたかったので、近くに喫茶店があるか聞くと、「浪漫」と「びあんか」の二つがあるという。まずは「浪漫」に向かったが、モーニングメニューがなさそうだったので「びあんか」に行ってみる。しかし「びあんか」への道中にあった「若草堂」に漂う昭和感に惹かれて覗いてみると、朝食メニューも扱っていたためここに決める。
焼き魚定食
直前まではトーストとコーヒーのイメージだったが、「若草堂」の佇まいに刺激を受け、土壇場で焼き魚定食に切り替える。日本もあと少しだから。客はぼく以外に北欧系の若い女性二人組のみだった。
薄暗い店内には金魚が飼われており、古いポスターがたくさん貼ってあった。小さな中庭が見えた。まるで戦後の駄菓子屋を模したテーマパークのようだった。入店してしばらく店員がでてくる気配がないので、勝手に座って待とうと思ったら割烹着姿の小さなおばあさんが登場した。ぼくを見ると注文を取るよりも先になぜか、店内に3つある扇風機を立て続けに全部つけた。
扇風機
北欧系の女性二人組はうどんを食べていた。おばあさんが焼き魚定食を持って出てきた。しかし、おばあさんの位置からぼくの席までの最短経路には扇風機という障害物があった。ぼくはてっきり、おばあさんはテーブル一個分回り込んでこちらにくるのかと思った。しかしそうではなかった。おばあさんはどうしても扇風機が邪魔をしてる細い道を通りたいらしく、扇風機を押しのけようと、ぼくの焼き魚定食を両手でもったまま、その小さな体で扇風機に体当たりをしていた。扇風機サイドは一切の動じる気配を見せなかった。そしてついにぼくの朝食のお盆にぼくの味噌汁が溢れ始めた。ぼくは味噌汁が溢れていることよりも、おばあさんが扇風機に体当たりをしていることにショックを受けていた。だってここは勝手知ったるあなたの店じゃないか。ちょうど昨日模様替えでもしたのか。いや、そもそもなぜこんな近距離に3台も扇風機があるのか。悪い癖だった。ぼくは考えすぎていた。
そのときだ。ショックから立ち直れず思考がドリルダウンを開始したぼくを差し置いて、北欧系の女性のひとりが立ち上がった。美女はさっとおばあさんに駆け寄り、片手でおばあさんを支えながら、片手で扇風機をどけてくれた。
間一髪。グッジョブ。これだからできる女は違う。見てるだけの男とは違う。別皿に乗っていた味付け海苔に味噌汁が被っていたが、おばあさんに被らなくて本当に良かった。最後は無事ぼくが手渡しでお盆ごと受け取ったが、その間際におばあさんは言い放った。
「扇風機で海苔が飛ばないように気をつけるんだよ」
焼き魚定食は最高に美味しかった。
(たいchillout)