【ウズベキスタン/タシュケント】Booking.comと日本人宿

日本人遭遇率

カプセルホテルで一泊した翌午前、ぼくは改めてBooking.comでホステルを探して、そこにチェックインした。清潔感があってスタッフの感じも良かった。"スカンジナビア"という名のドミトリー部屋に案内されると日本人の壮年男性がいた。八つあったうちの一つのベッドを指差しそこにも日本人女性がいるという。やっぱり。やっぱり日本人が多い。

どういうことか。Booking.comには口コミ機能があった。宿泊者はそこにホステルの感想と評価を投稿できるのだ。当然、バックパッカー宿には世界各国の宿泊者からの口コミレビューが世界各国の言葉で投稿されることになるのだが、そこに「日本人による日本語の口コミ」が投稿されているホステルに行くと、格段に日本人遭遇率が高かった。

日本語による口コミを見て訪れる宿泊者たちの多くは、決して日本人に会いたくて来ているわけではないと思うし、日本語しか読めないからそれ以外に選べないわけでもないと思う。彼らはほとんど無意識に日本語を読んでしまい、無意識にそのホステルを選んでいるのだ、とぼくは思う。その無意識を養成しているのが、Booking.comアプリに搭載されている「口コミの自動ソート機能」である。アプリは多言語表示に対応しているが、それを日本語で利用している場合、日本人の口コミが自動で一番上に表示されるようになっているのだ。なんともうまくできている。日本語の口コミがあれば、ぼくらはほぼそれだけを読んでぼぼ無意識にホステルを選んでしまう。そうしてそのホステルには日本人が集まるようになる。

ちなみに、少し話は変わるが、世界には日本人が経営する日本人宿というのがそれなりにある。たとえば中央アジアの旅では、キルギスビシュケクにある"さくらゲストハウス"という名前をとても良く聞いた。曰くそこには、旅の「情報」が集まる、という。日本人と出会ってそれぞれの旅の話になり、ぼくがビシュケクを訪れたと言うと皆当然のように、「こっちがさくらゲストハウスに泊まった前提で」話を進めてきた。泊まっていないというとちょっと驚かれた。日本人宿のある街では他のホステルと比較検討などせず、日本人宿に泊まる。そういうものらしかった。

さて、ぼくといえば変なところで素直であり、変なところで捻くれているところがあり、さらにその両者が葛藤を続けているようなところがあるので、日本人との距離のとり方については常に流動的であり続け、相反する思いが拮抗し、己のスタンスが固まらない。ウズベキスタンにいた時点でぼくは日本人宿は避けていた。Booking.comに至ってはわざわざ使用言語をEnglish(US)に設定変更し、日本人の口コミがトップに表示されないように(無意識に影響を受けないように)までしていた。

タシュケントで新しく移ったホステルもEnglish(US)の設定で見つけたものだが、日本人の口コミがチラッと目に入ってしまっていたのだ。もしかしたら、とは思った。チェックインしてみてそれが、やっぱり、に変わった。

 

信憑性の高い評価

ホステルの話を続けると、Booking.comの10点満点評価は非常に信憑性が高かった。食べログよりもAmazonよりも優秀である。カザフスタンアルマトイでは長めの滞在の中で三つのホステルを渡り歩いたが、移動するたびに評価の高いところに変えてみた。するとその差は歴然だった。それ以降、ぼくは評価をしっかり見るようになった。

その慎重さがなにかの敗北のように思えてしまうのは、ぼくが捻くれているだけなのかもしれない。新疆ウイグル自治区以前の旅においては、ほとんど評価も口コミも見ていなかった。それが失敗する場合もあれば、成功する場合もあった。そのうちの奇跡的な成功例を思い出すと、今でも「リサーチしては負けなのでは?調べれば調べるほど旅のマジックからは遠ざかるのでは?」と考えてしまう。リサーチとマジックの間に、感情論を排したメカニズムはあるのかどうか、それについてもよく考えるが(そしてそれはあると思うが)、経験を積んでも、自信を持ってさじ加減を決定するための有効なパターンは見いだせない。

いずれにせよ、評価が十分に高く、「日本人の口コミ」が目に入ってしまったタシュケントのそのホステルでやがてぼくは、前回の記事に書いたように、アライくんという新たな日本人に会うわけだ。彼のように、余計なことは考えずにただ一生懸命に楽しむのが一番なのだとも思う。余計なことを考えがちなぼくはいつもそういう人が好きで、ぼくの旅はある意味でそういう人たちによって作られてきた。それに、余計なことをどれだけ考えたとしても、やがてぼくにも、ただ一生懸命に楽しむ以外に手立てのない局面がやってくる。それだっていつも同じことなのだ。

(たいchillout@ラオス)

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