银河铁道TIMES

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【ネパール/カトマンズ】アイコスの火

ヒマラヤのお膝元

カトマンズに一泊した翌午前、早速中心部のタメル地区に出かけてヤクの毛でできた手編みのフード付きセーターを買った。一張羅なのでいくつも試着し3,500ルピーから3,000ルピーまで値引交渉をして手に入れた。それをその場でウィンドブレーカーの下に着て歩き出す。見事に着膨れした。しかし最高にあたたかくなった。SIMカードを300ルピーで仕入れ、7日分4GBを900ルピーでチャージし、昼食は中華食堂で揚州チャーハンを食べた。カフェでアメリカーノを飲みながらiPhoneKindleアプリで小説を読み終え、アウトドア用品店をぶらついて靴や寝袋を物色した。キャンプをするわけではないが、ドミトリー形式のホステルは(特に南国の場合)掛け布団が一年を通してブランケット一枚だけという場合が多く、寒がりなぼくはつらい思いをすることも多かった。寝袋があればそういうときに助かる。キルギスパミール高原のゲストハウスでも暖炉付きの室内でミノムシみたいに寝袋にくるまって寝ている男がいた(彼は冬眠しているみたいだった)。出発前は新品同様だった靴もボロボロになった。旅立ちから半年が経過しており、ついに買い替え時である。靴下や下着もすでに旅先で仕入れたものを着ている。ネパールは登山の国であり、ここカトマンズはヒマラヤに挑戦する登山家たちが態勢を整えるために滞在する、一種のベースキャンプ地だ。そのため、トレッキング用のシューズなどの登山グッズがこれまでの旅先ではみたことないほどに充実していた。

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He doesn't like China

小さなショッピングモールで誰もいないフロアを歩いていると美容院のテナントがあり、表に「Korean Style」というラベルとともに前髪のある日本人みたいな髪型をしたモデルの写真が張り出されている。ぼくからするとそのコリアンスタイルがジャパニーズスタイルであってもまったく違和感がない。だがそうは書かれていないで問答無用で「Korean Style」と断定されていることによって、ここネパールで「韓国風」というのが一種の美的ブランドであることを理解した。
チャイナタウンを歩いていて匂いにつられると、そこは「バラ」というお好み焼きに似た料理をその場で焼いて売っている露店だった。英語を話せる男性が、ぼくがそれを買う世話してくれ、ぼくはてっきり男性が店の関係者かと思ったがただの客だった。男性の容貌は一見中国人に見える。しかし彼はれっきとしたネパール人だった。適当に世間話をしているとひとり旅風の美女が現れる。今度こそ中国人だろう、ぼくがそう思ったのは正解で、女性はモダンな上海ガールだった。世間話の中で上海ガールはネパール人男性に対して、ぼくのことを指して「He doesn't like China」と言った。ぼくが中国に対して批判的なことを言ったわけではない。確か「中国の発展はすごいねえ」という話をネパール人男性が話していたとき、ぼくがただ黙っており、なにかを勘違いして気まずいムードを感じ取った女性がそう言ったのだ。女性がそう言ったのにはまったく根拠がない。だからぼくはその発言に「ある情報」を読み取らざるを得なかった。それは「日本人は一般的に中国が嫌い」ということを中国人自身が認識しているという、とても悲しい情報だった。もちろんぼくは中国が大好きで実際に何度も中国に行っているのだと断固として主張した。

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アイコスの火

街のそこかしこに求人広告が貼ってある。そのいくつかを読んでみると、なるほど、その仕事の売りとして「desktop works」を強調しているものが目についた。どういうことか。desktop worksとはつまりオフィスワーク、事務仕事ということだろう。ネパールではオフィスワークに人気があるのだ。日本でも女性向けの求人媒体なんかで「定時退社! 都心の綺麗なオフィス勤務」という特集が組まれていたりする。それと「同じ感覚」がカトマンズにもある。そういう時代がきっと世界で一斉にやってきているのだ。
旅行代理店に飛び込み、長距離バス路線の価格と日時を確認する。その際カトマンズ発でヒマラヤ山脈を上空からウォッチするフライトツアーを売り込まれたが、ぼくはそれをすでにやっている。ウズベキスタンのタシュケントからマレーシアのクアラルンプールに飛ぶときにヒマラヤを上空から望んだのだ。飛行機には何度も乗ったが、あれは空からの景色の中でも格別のものだった。
夕飯はパン屋でクロワッサンとバナナケーキを買って屋上テラス席の焚火に当たりながら食べた。カトマンズは寒かった。旅の最大の敵は寒さだ。夏に旅をはじめることができてとても良かったし、夏に寒い国に行って、冬に南に下るというプランニングも本当に正解だったと思う。そして来る次の夏はヨーロッパを北上するのだ。火は偉大だ。焚火にあたってそう思った。ぼくはタバコを吸わないが、タバコも火そのものにまず人を惹きつける魅力があるのではないだろうか。そういった意味では東京ではもはや主流となっているアイコスからはタバコの本質が失われているのかも知れない。オフィスの喫煙所でアイコスを吸っていた元同僚たちをチラッと思い出した。

(たいchillout)

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