银河铁道TIMES

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【ネパール/カトマンズ→ポカラ】埃の街から湖の街へ

埃の街

「長く半年近く旅をしてから、いろんなことの見晴らしが良くなってきている。この見晴らしを持ってすれば日本に帰ったときも、なんでもできるような気がしてくる」

肌寒いが陽当たりの良いホステルの屋上でひとりで朝食をとっているときのメモにこう残されている。ぼくはその心境をとてもよく思い出せる。なぜかというと、その感覚は「あの日あの場所」だけではなく「日々あらゆる場所」で断続的に感じ続けていたからだ。しかしそう感じたことは覚えていても、肝心な見晴らしの良さとなんでもできるような全能感そのものは、帰国して一年が過ぎた今ぼくの頭のどこの部分にも残っていない。さみしいと言えばさみしいし仕方ないと言えば仕方ない。ぼくはブログを書き続ける。

カトマンズを経つ日、七ヶ月の旅を共にしたスニーカーをホステルのゴミ箱にぶち込んだ。新しいものを買ったので古いものは捨てる。旅の持ち物すべてにおいて言えることだった。カトマンズは仏教色があり山を身近に感じる美しい街でナイスなクラフトビール屋もあったが、どこを歩いても埃っぽかった。これには出会った旅人もみな閉口しているようだった。ぼくはなんとカトマンズでマスクを買った。今流行のマスクだ。埃っぽいカトマンズに顔をしかめた同室のフランス人男性がぼくにおすすめした街がある。それが西に行った先にある「ポカラ」だ。ポカラには美しい湖があるという。内陸国のネパールにいて、ぼくも湖を見たくなった。それにポカラからさらに西に行けばインドとの国境が三つ程あった。ぼくはネパールに入国したときとは別の国境でインド入りすることにこだわっていたのでポカラはなににつけ最適な中継地点だった。カトマンズには四泊して早朝にポカラ行きのバスに乗った。

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山道

チケットの予約は不要、その場で買って乗れると人々が言うのでぼくはそうした。1,000ネパールルピー、どうやら昼食代金も含まれているらしい。ぼくは最後部座席の左の窓際に案内された。隣は西洋人のカップル。早めに乗り込んで乗客が揃っていくのを見ていたが、旅行者とネパール人が半々というところだろうか。バスの中程には中国人のおじちゃんおばちゃんのグループがいて賑やかにしている。そのノリもその厚かましさも日本人のおじちゃんおばちゃんグループに瓜二つ。そして彼らから通路を挟んで反対側に、ひとりの若い東洋人女性が静かに入ってきて静かに座った。その女性も、中国人かなとぼくは思った。同じ中国人でもこんなに違う。それにぼくは深いインプレッションを受けた。マナーのない浮かれた中年たちと、身のこなしからして丁寧なひとりの若い女性。

朝食はバスの中で買い込んでおいたパンをかじり、それから午前中はずっと車窓から景色を眺め続け、昼食は山の中の食堂だった。バスのチケットから半券を切り取りスタッフに渡すとちょっとしたバイキングにありつける。味は記憶していない。それどころではなかったのだ。ぼくは食後にトイレに入っている間にバスに置いて行かれそうになった。
インドにいた頃からお腹の調子が良くなく、ぼくは街歩きの最中も注意深くトイレの場所を把握し、トイレに困る状況を作らないようにしてきた。
長距離バスの移動でも同様で、ぼくは食べ過ぎないように飲み過ぎないように気をつけ、眠くてもだるくてもトイレ休憩はスルーしないように自分を叱咤した。旅でなによりも大切なのは実はこういう心がけの徹底だ。だが、それでもぼくのお腹は不安定な状態にあり、出発時間ギリギリまで洋式でありながら便座のない(洋式でありながら便座のない)トイレにこもっていると、なんか嫌な予感がしてきた。バスにトイレはついていないのでスッキリしないまま乗りたくはないが、なんか嫌な予感がする。嫌な予感に従ってぼくはトイレから出ることを決断し、ほとんど流れない水で手を洗ってトイレを出ると、食事場所には誰もいない。外に走り出るとぼくのバスが動き出していた。ぼくは手を振って走った。バスは止まった。間一髪。なぜかぼくが謝って無事バスに乗り込んだが、お腹の調子もアレなのであらゆる点で気が気でないままだった。あのままぼくがトイレにこもっていたらどうなっていたのだろう。ぼくのバックパックはバスのトランクに積まれたままだった。
朝早く出たバスは陽が傾く手前くらいの時間にポカラに到着した。あれからお腹は落ち着いたのでもうそれだけで御の字ではあったのだが、ポカラまでの山道は揺れが度を越してひどく、もう二度とあの道をバスで行きたいとは思わなかった。

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白い山

ポカラのバスターミナルからは白い山が見えた。すでに十分標高は高いが、さらに圧倒的に高い位置に見たこともないほど尖った山が見える。それも、とてもクリアに見えている。あれがヒマラヤだろうか。あるいはもしかしたらあれこそがエベレストなのだろうか。ぼくはひとまず売店でコーヒーを頼み、その山が見える位置に座って飲んだ。

(たいchillout)