【アラブ首長国連邦/ドバイ】三月のドバイの朝

人種の間違われ方

オマーンからUAEアラブ首長国連邦)への国境を越えた夜行バスの乗客は、ほとんどが出稼ぎのインド人とパキスタン人だった。そのうちのひとりからぼくはインドネシア人に間違われた。アラビア半島からするとインドネシアも日本も、その遠さはあまり変わらない。日本から離れれば離れるほど、ぼくという人種の「間違われ方」もざっくばらんになってきた。
このバスには、他にバックパッカーはいない。UAEWi-Fiにすぐさま接続できた高級なイミグレはあっさりとパスし、朝の四時半すぎにドバイで降ろされた。砂漠を見たかったが、夜なのでバスで通り過ぎた外の風景は見ることができなかった。
UAEフラッグキャリアであるエミレーツ航空が拠点を置くドバイ国際空港は、日本とヨーロッパを安く往復するときにトランジットで利用されることも多い有名なハブ空港だ。その空港を経由せず、バスでドバイ入りすることは、とても自分らしい。

 

三月のドバイの朝

降車地点がドバイのどこなのか。予約しているホステルまでここからどのように行くのか。そうした細々としたことはバスに乗る前に調べていなかった。だが、ドバイのような街だと、公共交通機関も発達しており、Google Mapも充実しているに違いない。英語が公用語だと聞いているし、この街での移動は、楽勝の部類に入ると考えられる。
ヨーロッパに近づくにつれ確実に、街は発展し、物価は上がり、Google Mapは東京と同じ感覚で使えるようになってきていた。これまで通過してきたアジアの「奥」と言える国々では、Google Mapは必ずしも万能ではなく、それぞれの地域でメジャーな地図アプリが存在した。それらの情報を人々から仕入れ、柔軟に使いこなしていくことは、スリリングスで楽しかった。

Google Mapがあれど、夜が明けなければ話にならないので、手近な建物の軒下で若干の寒さに耐えながらやり過ごした。バスを降ろされたこの辺りは、ドバイと聞いて思い浮かべるような大都会ではない。この建物は土産物屋だろうか。季節は三月末。ドバイに冬は無いが、隣で同じように座っている男が半袖にサンダル姿なのには驚く。現地の人間か、もしくは移民か。この店の開店を待っているのだろうか。五時に、コーランが流れる。少しずつ空が明るくなってくる。さらにもう少し待って、ぼくは朝食を探しに歩き出した。大都会と言われるこの街に、しばらく腰を下ろしてみるつもりでいた。

(たいchillout)

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