银河铁道TIMES

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【インド/デリー】きっともう見つけているんだよ

お、今日もきたな

ニューデリーの中心地域であるコノートプレイスに行くとさすがに洒落た店が多い。生きのいい若者とリッチな大人たちのバランスがちょうど良く、東京で言えば原宿から表参道、青山あたりの雰囲気だろうか。ファストフードもカフェもバーも多国籍料理の隠れた名店もなんでもありそうな感じがある。基本的にインド人女性は肌の露出が少ないが、ここでは短めのワンピースを着ている美女を見かけた。ぼくのような外国人もいるのだろうが人出の絶対数が多いので全く目立たない。車が一時停止して道を譲り合っている。ここには大都会のソフィスティケートがある。刹那的に生きる市民の消費生活がある。

夜にホステルに戻るとダーとコリーがうるさい。ドミトリーでも一緒にスマホゲームをやりながらほとんどずっと話しているがそれだけではなく、彼らは毎晩、何人かの仲間と一階のコモンルームでなんかのボードゲームをやっているのだ。酒も飲んでいるのだろう。彼らの騒ぎ声はドミトリーにもきこえてくる。ときどきすごい勢いで階段を駆け上がってくる音がすると、それはコリーだ。ゲームでハイになり酔っ払っているコリーは毎晩すごい勢いで階段を駆け上がってきて、ドミトリーのトイレに走り込む。すると三秒後にすごい勢いでうんこをぶっ放す音がする。毎晩だ。ぼくは毎晩コリーがすごい勢いでうんこをぶっ放す音をきいている。階段を駆け上がってくる音がすると「お、今日もきたな」とぼくは思う。

ぼくは自分のベッドで、目隠しカーテンを引いて、買ってきた瓶ビールをこっそり飲みながら、だいたいkindleで本を読んでいる。初日にぼくも、ダーとコリーにそのなんとかというボードゲームを知っているかと尋ねられたが、ぼくは知らないと答えた。フレンドリーな人たちと仲良くなれそうだなと思ったが、フレンドリーすぎるとぼくは一歩引いてしまうたちだ。彼らのテンションについていくときっとどこかで無理をしてしまう。このあたりは旅と無関係の人生経験として、経験上分かっている。

 

道は無い、でも行けるよ。

翌日、ハウツ・カズ・ビレッジという、アートが盛んらしい地域に行く。マンハッタンのグリニッジ・ビレッジを想起させる地名だが、ハウツ・カズ・ビレッジは概ねツーリスティックだった。国内外の観光客に向けて「開発された」という印象があった。だから飲食店の並ぶ賑やかな通りをほとんど脇目もふらずにぼくは通り抜けてしまい、気がついたら店なんて一つもない空き地に出ていた。周囲は住宅だ。しかもどちらかと言えば貧しい地域かもしれない。時刻は夕方。空き地では小学生くらいの少女たちが遊んでおり、ぼくが通り抜けて行こうとすると少女のひとりが「No way」= そっちには道がないよと言った。
ぼくはとっさに言葉が出ず、No wayとは言うものの英語が通じるとも思えなかったので立ち尽くしていると、別の子が「You can go」= そっちに行けるよと言った。行けるのか、道がないのか。二人の言うことは食い違っている。迷ったぼくは、三つのパターンを考えた。

ひとつ。少女Aは道がないと思っており、少女Bは道があると思っている。
ふたつ。道はあるが、少女Aはそちらに行って欲しくないと思っており、少女Bは行ってもいいと思っている。
みっつ。道はあるが、少女Aはそちらに行かないのがぼくのためだと思っており、少女Bは行きたいなら行かせとけばいいと思っている。

私道という可能性もある。ぼくは少女たちの表情を見て、ジェスチャーで「本当に行っていいの?」とアピールした。道があったとしても雑草が生い茂っているのでいわゆる獣道でしかないのであるが、個人的には行きたい。だが迷惑ならもちろん引き返す。少女たちが出した結論は「You can go」だった。
獣道を進むと、向こうに探索しがいのありそうな公園が見えてきたが、公園とこちら側は背の高い金網で遮られていた。道は無かったということになる。しかし、左右を見渡すと一箇所だけ金網が破られて壊れているところがあり、背中を丸めてそこをくぐることでぼくは向こう側のアスファルトに降り立つことができた。
二人の少女が言ったことは両方とも正しかったことになる。No way しかし You can go。道は無い、でも行けるよ。

 

きっともう見つけているんだよ

この晩も目隠しカーテンを閉めたベッドでこっそり瓶ビール(スタウト)を飲み、夜食でチョコマフィンを食べた。くつろいでいると、かなり久しぶりの人からメッセージがきていた。モンゴルのウランバートルで世話になったドックだ。もう六ヶ月か七ヶ月前になる。あれ以来連絡はとっていなかった。ぼくがまだ旅を続けていることはInstagramFaceBookで知らせていた。当たり障りのないやりとりのなかで、ドックはぼくに「旅する理由は見つかった?(Have you found the reason of your travel)」ときいてきた。なんでこんなことをきくのだろう。そう言えば、ぼくはうっすらと思い出した。多分ドックは一度ぼくに「どうして旅をするのか」ときいたのだと思う。そのときぼくはきっとこう答えた。「わからない。その理由を旅で探している」と。日本語にするとすごくナイーブな質問とキザな回答だが、すべてのやりとりは英語なのでこういう会話も意外とあっさり行われる。ドックはそれを覚えていたのだろう。

ぼくは「見つかってない」と答えた。自分が旅する理由は事実いまだによくわからなかった。するとドックはこう返してきた。「きっともう見つけているんだよ」。日本語なら気恥ずかしかったり、社交辞令になったりしてしまうこうしたやりとりが、異国の友だちを相手に英語で交わされるとき不思議に心にスッと入ってくる。

(たいchillout)

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